- 2018-1-31
- PS, 人工膝関節置換術全般
おはようございます。
TKA Labです。
今回は、人工膝関節全置換術(TKA) vs人工膝関節単顆置換術(UKA)の術後2年の膝機能や患者満足度のお話です。ただ、一つ特殊な話でして、TKAもUKAも両側同時に行っている症例同士の比較です。
あまり臨床で見ることのない両側同時TKA(UKA)、術後2年で膝機能や満足度に差があったのでしょうか。
近年、早期変形性膝関節症の治療において保存療法ではなく、インプラントのデザインや、手術手技の向上によりTKAが提案される機会が増えています。そのため、治療方法の選択として、TKAを選択する患者が増加しています。
一方、術後の結果に満足しない患者も増えており、患者の15-20%が術後の結果に満足しないと報告されています。
そのような患者に対してUKAを提供することで、患者満足度が改善するのではないかと考えました。
しかし、UKAは、インプラントやインサートの耐久性とリビジョン(再置換)のリスクが大きいと言われています。
また、TKAに比べてUKA対象の患者が少ないこと、手術手技が複雑なことによってわずかな外科医だけがUKAの提案ができるという現状です。
そのため、TKAのうち約30%がUKA対象と言われていますが、UKAが実施されるのはたった5%だと言われています。
今回の研究の目的は、TKAとUKAの術後2年において機能等で違いが見られるかを調査しました。
対象は、TKA群36名のUKA群36名の2群に分けました。
主な評価項目は、術後2年のKnee Outcome Survey-Activities of Daily Living Scale (KOS-ADLS) と High Activity Arthroplasty Score (HAAS)、入院期間、合併症を調査しました。
では、結果です。
両群ともにKOS-ADLS、HAASは似たような値となりました。一方、入院期間はUKAの方が少ない結果となりました(UKA:5.4日、TKA:6.6日)。
合併症と再入院率はTKA群の方が多い結果となりました (UKA:0例、TKA:8例)。
以上のような結果となりました。
UKAの方が手術侵襲や置換する面積が少ないため、術後機能や満足度がTKAより高いかと思いましたが、結果は同じでした。
今回の論文では、対象者の術前機能も調べており、術前の機能も同レベルでした。
そのため、今回の結果だけを見ると、内側のみの変形性膝関節症であれば、TKAもUKAもどちらを選択しても術後2年には同程度の膝機能を獲得することができると言えます。
ただ、UKAの方が入院期間が少ないこと、合併症や再入院率が少ないことを考えると、早期退院や早期社会復帰を目指す方にとってはUKAを選択した方が良いのかもしれません。
また、予測の範囲ですが、UKAの方が入院期間が短いことは、十字靭帯が温存されることが膝機能の早期回復に影響を及ぼしているのではないでしょうか(術後の膝関節の安定性や固有受容器の温存の観点から)。
そうなると、TKAでもPS(PCL切除型)やCR(PCL温存型)よりも十字靭帯温存型TKAの方が膝機能の回復や社会復帰が早期となる可能性が高いかもしれません。
いかがでしたか。術後の可動域に関しては個人的にUKAの方が良いような気がしますが、今回の文献が海外の文献ということもあり、深屈曲動作はあまり問題にならなかったのかもしれません。
日本やアジアを対象としたらまた違った結果になるのかなと思い、今日はこれで失礼します。