人工膝関節置換術(TKA)後は疼痛は改善しますが、
約半数の方が階段の降段が難しいと訴えると言われています。
難しいと訴える原因として、
過去の報告では、
身体機能の非対称性が原因と述べられていますが、
股関節・膝関節の筋力と降段動作との関連性は述べられていません。
膝伸展筋力の改善や股関節外転の筋力の改善が、
TKA後の身体機能に影響を及ぼすことは過去に述べられています。
が、
股関節の筋力が降段時の身体機能にどの程度関与するかを調査することは、
TKA後の代償動作・非対称性の身体活動についてのヒントを得ることができると考えられます。
そこで、
今回は、
1)降段時の膝関節伸展・股関節外転・股関節外旋の最大筋力と総モーメントを術後3,6ヶ月に測定
2)TKA群とコントロール群と比較
3)筋力と総モーメントの関係性
以上を調査したお話です。
TKA群20例、コントロール群20例を対象とし、
術後3,6ヶ月の膝関節伸展、股関節外転・外旋の等尺性収縮を測定し、
体重にて正規化しました。
20.3cmの段を降段した際の
降段時の3次元動作解析も行いました。
(降段時は介助や手すりは不使用)
得られた動作解析のデータから
下肢全体のトータルモーメントとトータルモーメントにおける膝および股関節のモーメントの割合を計算しました。
TKA群の術側と非術側、TKA群とコントロール群の比較、
トータルモーメントと筋力との相関をみました。
それでは結果です。
まず筋力の推移ですが、
股関節外旋・膝関節伸展最大筋力は、
術側と非術側を比較すると
術後3,6ヶ月において、術側が有意に劣っていました。
股関節外転筋力においては有意差を認めませんでした。
次に、
TKA群の非術側とコントロール群を比較すると、
股関節外旋筋力が
非術側が術後3ヶ月において有意に劣ってました。
さらに、
トータルモーメントと
トータルモーメントにおける膝関節の割合は、
術側とコントロール群、
非術側とコントロール群と比較した結果、
術側・非術側下肢ともに
術後3,6ヶ月においてコントロール群よりも有意に劣っていました。
次に、
筋力と各モーメントとの関係性はどのようになったかというと、
術後3ヶ月において、
膝関節伸展筋力、股関節外旋筋、股関節外転筋力は、
トータルモーメントと有意に相関しました。
また
股関節外転筋力とトータルモーメントにおける膝関節の割合は、
負の相関を示しました。
術後6ヶ月において、
膝関節伸展筋力、股関節外旋筋力はトータルモーメントと正の相関を示しました。
また、
股関節外転筋力と股関節外旋筋力はトータルモーメントにおける膝関節の割合は、
負の相関を示しました。
今回の結果では、
術後3ヶ月における術側・非術側の筋力低下、
術後3,6ヶ月におけるトータルモーメントとトータルモーメントにおける膝関節の割合が
コントロール群と有意に異なるという結果となりました。、
つまり、
TKA後における階段昇降動作は、
膝関節伸展筋力・股関節外旋筋力が低下している中で、
コントロール群と異なる下肢の使い方をしているということがわかりました。
では、
正常膝の階段降段動作とどのように異なるかというと
TKA後では股関節外転筋や股関節外旋筋がたくさん働き、
膝関節伸展筋を使わない(使えない?)降段動作を行なっているということです。
また、
運動強度の大きい後段動作において
筋力低下を生じている下肢の負担を減らすべく、
両側共にトータルモーメントを低下させていると考えられます。
では、
理学療法としてどのように考えていくかというと、
まず大腿四頭筋の筋力増強運動は必須でしょう。
次に、
降段動作時の代償的な動作を良しとするか悪とするかです。
悪とするのであれば大腿四頭筋をどんどん鍛え、
代償動作をいち早く改善しましょう。
一方、
良しとするのであれば、
股関節外転や外旋筋の筋力増強運動を行うことや、
普段より過剰に活動することを踏まえて
ストレッチ等でケアを十分行う必要があります。
また、
術前リハにおいても、
術後3,6ヶ月に使うであろう股関節外転・外旋筋の筋力増強運動を
積極的に行うこともよいでしょう(膝に負担かからないし^^)。
本日は以上です。