おはようございます。
TKA Labです。
人工膝関節置換術(TKA)は、
末期のOA患者の生活の質(QOL)を変えます。
しかし、
約25%の方が術後の生活に満足していないと報告されています。
約25%の方が術後の生活に満足していないことは、
最新の技術で最新のデザインの人工膝関節を作っても
解決しないと言われています。
いったい、
TKA後に満足していない方は何に満足していないのでしょうか。
歩行?階段動作?膝の可動域?
今回は、
歩行に着目し、
人工膝関節単顆置換術(UKA)とTKA、正常膝の歩行速度を比較した報告です。
対象は、
正常な121膝(正常群)、
後十字靭帯温存型TKA(CR)が12膝(CR群)、
mobile型のUKAが12膝(UKA群)です。
TKAとUKAは、
最低術後1年以上経過している膝を対象としました。
(TKA群とUKA群は、年齢・BMI・関節の変形の程度が両群において差が生じないように設定)
歩行動作の測定は、
床半力が設置されているトレッドミル上で
歩行速度が最大となるまで歩行し、
最大歩行速度と床半力の鉛直方向の力を計測しました。
では、結果です。
最高歩行速度は、
CR、UKA、正常群と比較すると
有意にCR群の最大歩行速度が低下していました。
(CR群:1.6m/s、UKA群:2.2m/s、正常群:2.2m/s)
また、
床半力の鉛直方向の力の経時的変化では、
UKA群が正常群に近く、
CR群の最初の鉛直方向の力のピークが遅延する傾向でした。
CR群とUKA群の歩行速度の差ですが、
CR群はACLが切除されています。
一方、UKA群においては、ACLが温存されています。
CR群ではACLが温存されないため、
立脚期における前後方向の安定性を維持することができず
歩行速度に影響が生じたのではないでしょうか。
また、
床反力計の鉛直方向の力に関しては、
通常、
立脚期における床反力の鉛直方向の力は二峰性を示します。
しかし、
TKAの歩行では、
最初の峰が正常膝の歩行と比較して遅いと言われています。
今回の結果においても、
UKA群や正常群と比較してTKA群では最初の峰が遅く生じました。
CR群の歩行速度や床反力の鉛直方向の力が
正常群と異なるという結果をみると
CR群は歩行に関して不満を感じてもおかしくありません。
では、何が原因なのでしょうか。。。。
一つは、ACLが考えられます。
ACLは先ほども書きましたが、
膝関節の前後方向の安定性に寄与します。
しかし、CRではACLを切除します。
TKA(CR)後には膝関節の機能が正常膝に近くなる(TKA≒正常膝)と思いがちですが、
ACLを切除するため、
TKA(CR)≒ACL損傷膝(ACL不全膝)
と考えます。
そのため、
従来の大腿四頭筋の筋力増強運動だけを行うのではなく、
ACL 損傷膝へのアプローチと同等な治療プログラムを検討していく必要があります。
ACL損傷膝として考え、
リハビリを行なった場合の歩行速度、床半力データ等
どのように変化し、患者満足度はどのように変わるのか。。。
また報告したいと思います。
本日は以上です。