- 2019-6-10
- 日常生活
TKAを受けられる方の中には、仕事をリタイアしている方もいれば、
TKA後に復職を希望される方もいます。
また、
TKA後の生活がイメージできずに、
復職について悩まれている方もいます。
以前、
TKA後の復職について
「人工膝関節置換術後の復職について」(どストレートな題名ですが(^^;))
では、約8割以上の方が、復職もしくは部分的に復職したという結果でした。
今回は、
TKA後の「復職」に関しての要因について分析した報告です。
対象は、
TKA前に就業していた266症例(平均年齢は58.3±6歳)です。
TKA後の復職は
完全に復職:178症例(67%)
部分的に復職:59症例(22%)
復職しなかった:29症例(11%)
また、部分的もしくは完全に復職した人の術後期間の中央値は3ヶ月(範囲2-5ヶ月)
という結果になりました。
それでは、どのような症例が復職しやすく、
どのような症例が復職しにくいのか見ていきましょう。
【身体機能】
・術前の身体活動が低いことが復職しないことに影響を及ぼしていなかった
・復職しなかった症例の膝機能のスコアは有意に低かった(OR:0.35)
【職業】
・自営業を営む34症例は2ヶ月で復職し、サラリーマンより早かった
【勤務時間】
・部分的に復職した症例(59例)は平均8時間/週ほど勤務時間が減った
【術前の欠勤】
・術前に膝痛にて欠勤する症例はTKA後に復職しない(OR:2.63)
・復職した症例は、復職しなかった症例よりも膝痛による欠勤期間が短かった(OR:1.12)
【膝への意識】
・膝の症状が自分の仕事に影響を及ぼしていないと考えていた症例は、復職の可能性が高かった(OR:0.38)
いかがでしたか。
過去の報告では
早期復職の因子として、
「女性」「50歳以下」「自営業」「精神的・身体的スコアが良いこと」「合併症が少ないこと」「身体障害者が働きやすい職場の環境」
ゆっくり復職される方に関係する因子は
「術前の疼痛が少ない」「肉体労働」「休業手当等の保証」
と報告されています。
過去の報告や今回の結果から
復職に関する要因をまとめてみると、
【環境】、【膝の機能】
の2つの要因があります。
【環境】は、
自営業かサラリーマンか
エレベーターか階段か
和式トイレか洋式トイレか
何よりも
金銭的な環境にもっとも大きく左右されます。
また
【膝の機能】は、よいに越したことはありません。
ただ、【環境】と【膝の機能】のどちらが重要かというと、
過去の報告や今回の結果から、
「環境> 膝の機能」
と考えられます。
大きくわけて二つの要素が揃うことで復職が可能ですが、
何よりも「復職しなければ生活できない」とう動機が
今回の結果からも臨床で見ていても一番です。
また
今回の結果から術前の欠勤の有無や欠勤期間が
復職への予測因子となることから、
復職を希望される症例を担当した場合には、
術前の勤務状態について聴取し、
術前の勤務状態を踏まえて患者さんにアドバイスすることも必要だと考えます。
本日は以上です。