人工膝関節置換術後のランジ動作

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近年人工膝関節全置換術(TKA)が増加し、

今後も増加すると言われています。

 

増加する理由の一つとして、

高齢者に加え若年者のTKAも増加傾向にあるからです。

 

若年者は、

TKA後の膝機能に対して高い期待を抱き、

術後は正常膝と同等となることを期待されます。

 

 

TKA後の膝への高い期待に応えるために、

潜在的な運動学的異常を特定する必要があり、

特定方法の一つにフロントランジ(FL)が有用と言われています。

 

TKA後のFLにおける過去の報告は、

術後1.5年において、

非術側と比較して術側の膝関節屈曲が少ないと言われています。

 

屈曲角度が少ない理由の一つとしては、

前十字靭帯、後十字靭帯を切除するため、

固有受容器が十分機能していない影響が考えられますが、

まだはっきりと研究はされていません。

 

そこで、

今回は、

TKA後・人工膝関節単顆置換術(UKA)後のランジ動作における

矢状面の運動学についてのお話です。

 

 

 

対象は、

UKA群6例、TKA群8例、コントロール群6例です。

対象の術後からの期間は12〜14ヶ月です。

 

評価は、

Oxford Knee Score(OKS)、Tampa Scale for Kinesiophobia(TSK)、関節可動域(ROM)、筋力を測定しました。

筋力は、

Hand Held Dynamometerを用いて、

中殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、および大殿筋を測定しました。

 

また、

モーションキャプチャーにて動作解析をしました。

 

 

 

 

結果です。

TKA、UKA群において、

ROM、筋力(大殿筋、ハムストリングス、大腿四頭筋)に有意差は認められませんでした。

 

TKA、UKAの両群は、

中臀筋が術側・非術側ともに有意にコントロール群より低い結果となりました。

 

TKA群の術側・非術側の大殿筋・ハムストリングスはコントロール群と比較して有意に低い値でした。

TKA群の術側の大腿四頭筋はコントロール群より有意に低い値でした。

 

 

ランジ動作における股・膝関節は、

TKA群ではコントロール群と比較して、

FL動作周期の35-55%の期間のloading phaseとpushback phaseの初期において、

股関節と膝関節の屈曲が有意に少ないという結果でした。

 

TKA群とUKA群では股・膝関節の屈曲角度に有意差を認めませんでした。

 

UKA群はcontrol群と比較してFL動作において有意差を認めませんでした。

 

 

 

 

FLは単にROMだけでなく、

十字靭帯や膝の安定性も必要とし、

荷重動作には重要な要素が多く、

運動連鎖と運動のコントロールの最適化を必要とする難易度の高い動作です。

 

 

TKA群におけるFL動作時の股・膝関節の屈曲が少ないことは、

ACLや半月板損傷症例を対象にした研究と同等の結果となりました。

これを踏まえると、

TKAにおける前十字靭帯・後十字靭帯の切除は、

ランジ動作などの難易度の高い動作に影響を及ぼすことが考えられます。

 

 

 

また、

股関節、膝関節の屈曲角度が少ないことは、

体幹の後傾の代償が生じるため、

重心の前方移動が低下し、

前足部へ荷重が困難となります。

このようなことが生じると転倒リスクの増加にもつながります。

 

FLは股関節伸展筋の求心性の活動、

膝関節伸展は遠心性に活動します。

今回の結果から

大殿筋とハムストリングスの低い筋力が

TKA群のFL動作に影響を及ぼしていることも考えられます。

 

さらに、

大腿四頭筋力が低下しているため、

膝の外部屈曲モーメントを減らすようにするため、

膝関節の屈曲角度が減少します。

 

 

 

対象数が少ないことが気になりますが、

UKA、TKAそれぞれの高難易度の動作における違いが見られました。

 

満足度の高い患者さんを増やすために、

歩行にとどまることなく、

高難易度の動作のチェックおよび獲得も

今後のTKA後のゴールとして必要と考えられます。

 

 

 

本日は以上です。

 

 

合わせて読んでおきたい記事:  TKA後のアライメントと術後1年の身体機能
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