ホームエクサイズと外来リハビリ後の身体機能・マニュピレーション・コストについて

スポンサーリンク

人工膝関節置換術(TKA)は近年増加傾向であり、

それにともない治療費が増加していることは、

全世界的に問題となっています。

 

治療費の問題として、

リハビリも例外ではなく、

退院後のリハビリのコストと意義について調査が必要だと言われています。

 

TKA後の外来リハビリに関しては、

近年までは、

術後の定番のケアだと考え実施されてきました。

しかし、

文献は少ないですが、

外来リハビリの費用対効果についての研究では、

ホームエクササイズと術後リハビリの比較において、

同等という報告がされています。

(ちなみに、THA後の外来リハは不要というエビデンスがあり処方されなくなってきているようです。)

 

そこで、

今回は、

術後外来リハビリとホームエクササイズを比較し、

身体機能の改善や

マニュピレーションの割合、

経済性について調査したお話です。

 

 

 

 

まず、

外来リハビリ(OPPT群)、ホームエクササイズ群(HEP群)のリハビリですが、

OPPT群は、

歩行訓練、筋力増強運動、ROMを中心に行いました。

実施回数は2-3回/週でした。

 

HEP群は、

2週間実施、内容は歩行、他動ROMです。

他動ROMの内容は、

屈曲:端座位にて反対側を用いて屈曲

伸展:立位で膝関節を押す

です。

手術当日にホームエクササイズの指導を受け、

退院後に自宅で1時間に1回実施するように指導されました。

 

HEP群のうち、

ROMが90度未満、または、整形外科医が外来リハが必要と判断した場合には、

外来リハへ移行しました。

 

TKAは後十字靭帯切除型(PS)を用いました。

 

入院中のリハビリは2回/日実施し、

術後の評価は術後2週、6週、術後1年に

SF12、KSSを測定しました。

 

 

 

 

それでは結果です。

 

術後2週において膝関節90度以下の割合は両群において有意差を認めませんでした。

また、

麻酔下におけるマニピュレーションの割合も両群において有意差を認めませんでした。

 

SF12の身体機能はOPPT群が有意に高い結果となりました(45.71 vs 43.14)。

HEP群のうち36.7%がOPPTを必要とし、

そのうちの7.6%がマニピュレーションを必要としました。

 

多変量解析の結果、

年齢が60歳以下だとマニュピレーションを必要とするリスクが高いことを示しました。

 

HEPのリスク要因は特に認められませんでした。

 

OPPTのコストは平均$1436(15万円くらい)だったので、

HEPはこの費用が掛かりませんでした。

 

 

 

 

今回の論文では、

  • OPPT群とHEP群においてROMは同等であった
  • OPPT群とHEP群において身体機能も同等であった
  • マニュピレーションを実施する症例は一定割合存在
  • OPPTの方が当然ながらコストがかかる

以上のような結果となりました。

 

HEP群のROMが意外と効果的なのでしょうか。

術前角度についてのデータが記載されていなかったため不明ですが、

術前からROMが良い症例が多かった可能性もあります。

HEP群のプログラムが有効であれば自主トレーニングとして臨床に導入することもありではないでしょうか。

 

SF12においてOPPT群が有意に高い値を示し、

その差は2.57でした。

しかし、

SF12の点数の差が4.5以上でなければ、

臨床上の身体機能に差が認められないという報告から、

SF12において両群の身体機能に差がないと考えられます。

 

良好なROMの成績を残している一方、

マニュピレーションを必要とする症例は一定数存在するようです。

術後2週における屈曲角度90度以下の場合は、

術前のROMと比較し、

術前ROMが良い場合は、

積極的にROMを行うとともに、

リハビリの回数を増やしてくことを検討する必要があります。

術前ROMの値が小さい場合は、

早期にマニュピレーションの実施について医師と連絡を取り合う必要があるでしょう。

過去の報告では、

アフリカ系アメリカ人はマニュピレーションになりやすい、

ニコチンは関節線維化のリスクを高める、

機能の悪い高齢者はOPPTを必要とする、

と言われており、

ROM獲得のために、

このような因子についても情報収集する必要があります。

 

最後に、

理学療法士が介入しない分、

コストの発生を抑えることができます。

ただ、

筋力の改善やバランス能力の改善には長期間を要するという報告があり、

こられに対してアプローチするためには、

まだまだ理学療法士は必要だと考えられます。

 

日本の外来理学療法は時間が20分1単位であり、

多くのクリニックで1単位しか実施していないと思います。

そのため、

ROM・身体機能はホームエクササイズで、

筋力・バランスは20分の外来リハビリで改善、

といったように、

外来リハ・ホームエクササイズ双方で目的を分けることで、

あれもこれもの20分となるより、

筋力・バランス改善のために20分とした方が、

効果的かもしれません。

 

 

 

本日は、以上です。

合わせて読んでおきたい記事:  神経筋電気刺激療法(NMES)の効果について
スポンサーリンク

関連記事

LINE@登録はこちら

友だち追加

TKA Lab e-ラーニング

TKAに関わる理学療法士から好評いただいているTKA Lab e-ラーニングはこちら。↓クリック

広告

ページ上部へ戻る