- 2017-4-19
- 脛骨
人工膝関節置換術後の膝関節の屈曲可動域は、軟部組織の状態や人工膝関節置換術前の膝関節の屈曲可動域、手術の方法、医師の技術、コンポーネントのデザイン、後十字靭帯(PCL)の有無、人工膝関節置換術後の脛骨後方傾斜に左右されると言われています。
このように、膝関節の屈曲可動域の制限因子がいろいろある中で、今日は人工膝関節置換術後の脛骨後方傾斜に注目したいと思います。
人工膝関節置換術後の手術では、脛骨インプラントを設置するために、脛骨を骨切りします。
今回は、矢状面における脛骨骨切り面の角度を術後の脛骨後方傾斜角度とします。
では、人工膝関節置換術後のリハビリ前にレントゲンを見ると思いますが、どの程度の脛骨後方傾斜角度が膝関節の屈曲可動域へ影響を及ぼすのでしょうか。
例えば、人工膝関節置換術後に思ったような膝関節の屈曲可動域を得ることができない症例の場合、脛骨後方傾斜角度が何度であれば(何度までであれば)、膝関節の屈曲可動域の阻害因子となりにくいのでしょうか。
一つの過去の報告では、脛骨後方傾斜が0度と5度のどちらでも人工膝関節置換術(TKA)後の膝の関節可動域は大きく変わらなかったと報告されています。
これを踏まえると、人工膝関節置換術後の脛骨後方傾斜角度が0-5度の範囲であれば、膝関節の屈曲可動域の制限因子は、術後の脛骨後方傾斜以外の制限因子と考えられます。
手術手技やコンポーネントデザインは、我々理学療法士にはどうすることもできませんが、残りの制限因子の軟部組織のコンディションや人工膝関節置換術前の屈曲可動域にはアプローチできますので、人工膝関節置換術後の膝関節の屈曲可動域改善のためのターゲットが絞れてくるでしょう。
人工膝関節置換術後の関節可動域の改善に難渋する症例に出会った場合には、一度レントゲンを確認してみてはいかがでしょうか。