TKA後の症状が改善したにも関わらず、
一部の症例では正常膝と比較すると筋力低下や歩行障害、
疼痛が残存している症例がいます。
大腿四頭筋や股関節外転筋の筋力低下については、
3年以上継続するという報告もあり、
このような症例は日常生活に支障をきたすと言われています。
したがって、
術後のリハプログラムは、
このような症例に対しての
筋力低下や機能障害へ対応する必要があります。
TKA後に股関節周囲筋の筋力の改善によって、下肢機能機能改善が認められると考えられており、
特に股関節外転筋力の改善によって下肢機能が改善するという報告があります。
また、
股関節外転筋の改善が大腿四頭筋の改善より下肢機能に対して効果的という報告もあります。
さらに、
研究の対象者は少ないが、
リハビリに股関節外転トレーニングを導入することで、
機能改善がみられたという報告が過去にあります。
そこで、
今回は、
大規模な無作為化比較試験を行い、
股関節外転筋トレーニングが
TKA後の機能についてどのような影響を及ぼしたのか
調査したお話です。
対象を
外転筋トレーニング群(外転筋群)
コントロール群の
2群に分けました。
外転筋群は、
通常のリハビリに加えて、
15分の股関節の筋力増強運動を追加しました。
コントロール群は、
通常のリハビリに加え、
15分間の一般的な機能訓練を追加しました。
参加者は、
毎週45分の理学療法セッションを2回、
もしくは45分の理学療法と45分の水治療法のいずれかに参加しました。
また、
すべての参加者は、
週末に理学療法もしくは水治療法のいずれかを45分行いました
リハビリで行なったトレーニングのターゲットは、
大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋の筋力増強運動、
ROMの改善、歩行、階段昇降能力の改善でした。
また、mobilizationやマッサージも行いました。
参加者は、
歩行自立もしくは階段を安全にできる状態になると退院となり、
約12日にて退院しました。
退院後は、
外来患者として6-8週通い、
45分の理学療法+水治療法もしくは、
45分の理学療法を2回行いました。
6-8週を経過すると、
外来リハを終了し、
自宅にてホームエクササイズプログラムを実施しました。
外転筋群の外転筋トレーンングは、
側臥位での股関節外転、
うつ伏せでの股関節伸展、
立位での股関節外転運動を行いました。
その次に
負荷を増加させた股関節外転筋のトレーニングとして、
荷重下の運動として横歩き、
Hip hitching(どんな運動かわからない方はyoutube「Hip hitching」で検索してみましょう^^)、
セラバンド負荷での立位股関節外転を行ないました。
股関節外転運動に変わるコントロール群の運動は、
15minの機能訓練を実施しました。
15minの機能的訓練の内容は、
立ち座りや歩行を含みます。
水治療法を行う患者は上記の機能訓練を水中で行いました。
評価方法は、
KOOS、等尺性の股関節外転筋力、階段昇降テスト、6分間歩行テスト、TUG、40mの歩行速度、30CS、step taps、大腿四頭筋筋力、ROM、下肢のfunctional scale、SF12です。
では、結果です。
最終的に外転筋群は47名、コントロール群は48名でした。
股関節外転筋力は術後26週まで改善し、
最も改善したのは術後6週でした。
ただ、
両群において有意差を認めませんでした。
KOOSは、
どのsubscaleにおいても6週と26週では有意差を認めませんでした。
階段昇降テスト、6分間歩行テスト、TUG、40mの歩行速度、30CS、step taps、大腿四頭筋筋力、ROM、下肢のfunctional scale、SF12においても術後6週と24週では有意差を認めませんでした。
有意差の出なかった原因として、
段差昇降や階段昇降訓練などの
高強度の片脚プログラムをコントロール群に導入したことが原因の一つと考えられます。
また、
コントロール群の運動頻度が多かったことも
股関節外転筋力、KOOS等の評価に有意差を認めなかった要因の一つと考えられます。
逆に言うと、
今回外転筋群に導入したような、
股関節外転筋力にターゲットを絞った運動を導入しなくても、
コントロール群に導入した、
高強度の片脚プログラムを含む機能訓練を行うことで、
外転筋力の強化につながると考えられます。
本日は以上です。