人工膝関節置換術(TKA)後の歩行能力の評価として
Timed Up and Go(TUG)やShort Physical Performance Battery(SPPB)があります(TKA後症例だけに限らないのですが)。
しかし、
TUGは自宅のスペースによっては歩行テストを実施できません。
また、
SPPBの中にあるTimed Walk Test(TWT)がありますが、
直線歩行のみを評価するため、
実用的な歩行のテストとは言い難いです。
自宅生活における移動は、
障害物を避けることや方向転換、荷物を運ぶ等、
バランスと歩行パタンーンが変化します。
そのため、
自宅生活者でも可能であり、かつ実生活に促した歩行能力を表す指標が必要です。
そこで、
8の字歩行テスト(F8W)があります。
F8Wは直線とカーブがあり、時計回り-反時計回りにて実施されます。
F8Wであれば、
直線のみでなく方向転換も含みます。
さらに、
テストをする際のスペースは、TUGの約半分の直線距離で済みます。
そこで、今回は、
TKA後12ヶ月の症例を対象に8の字歩行テストの検者内・検者間誤差とTUGとTWTとの相関についてのお話です。
対象は、
TKA後症例82例を対象としました。
F8Wは、
1.52mの間隔をあけて二つのコーンをおきます。
二つのコーンの間に立ち、
自由歩行速度にて歩行します。
8の字を描き、スタート位置に戻ってきたら終了です。
この時の歩数と歩行時間を測定します。
F8Wと比較するために、TUGとTWTも測定しました。
結果です。
対象者の術後日数の平均は15ヶ月でした。
検者内誤差は1.8秒、
検者間誤差は1.2秒でした。
TUGとの相関はr=0.921
TWTとの相関はr=0.834
ということでTUGとTWTの間に強い相関が認められました。
近年、
入院期間の長期化が移動能力とバランス能力の低下の一要因となるため、
在院日数の短縮とともに、
自宅生活しながらのリハビリの需要が高まっています。
また、
移動能力とバランス能力の問題だけでなく、
医療への依存と医療費の削減のためにも、
自宅生活をしながらのリハビリへの移行は積極的になっています。
そのため、
早期退院可能と判断するために、
歩行能力の評価は重要なポイントとなります。
今回の結果において、
F8Wは、
検者間・内誤差も少なく、
TUG・TWTと相関が認められたことから、
F8Wも歩行テストとして有用なことがわかりました。
F8Wのメリットとして、
直線のみの歩行テストと異なりカーブを曲がるため歩行の難易度がわずかに上昇します。
そのため、より日常生活に促した評価方法の一つと考えられます。
さらに、
F8Wの歩行を注意深く見ると、
TUGやTWTと異なり、
歩幅が少ないことや方向転換後に歩行速度が低下する等が明らかとなりました。
そのため、
F8Wは、
直線的な歩行テストには見ることのできない、
方向転換後の歩行状態も確認することができたようです。
自宅復帰における重要因子の歩行を何をもって評価するか。。。
F8W導入を検討してはいかがでしょうか。
本日は以上です。