変形性膝関節症のリスク因子の一つと言われている、
大腿四頭筋力の低下は、筋線維のみの問題ではありません。
最近、
変形性膝関節症症例の大腿において、
脂肪浸潤、
つまり、
筋線維間と筋線維内に脂肪が蓄積し、
筋の羽状角が変化し、
筋発揮しにくくなることがわかってきています。
そこで、
脂肪組織の分解が効率的と言われているのが、
サーキットトレーニングです。
サーキットトレーニングは、
多関節筋力トレーニングと全身運動の両方を取り入れた複合運動であり、
体脂肪を下げるのに効果的です。
また、
各トレーニングのインターバルが短いため、
合計のトレーニング時間が少なくてすみます。
つまり、
時間を効率的に使え、トレーニングできます。
さらに、
自重、セラバンド等をトレーニングに使用するので、
コスト的にも◎です。
そこで今回は、
膝OA患者のサーキットトレーニングのトレーニング効果についてのお話です。
対象者は、48人。
年齢は40歳から65歳です。
OAの状態は、Kellgrenand Lawrence(KL)分類の3、
膝の痛みは、VASで4以上です。
群分けですが、。
今回は3つの群を比較しました。
一つ目は、サーキットトレーニング群(CT群)
二つ目は、筋力トレーニング群(ST群)
三つ目は、教育プロトコル群(EP群)で、
それぞれ16人のグループです。
それぞれの群の違いはというと、
CT群は、
プログラムはこのブログの一番下を参照してください。
運動強度は、軽度、中等度、重度の3段階に分けられ、
軽度プログラムは20秒間、
中等度プログラムは30秒間、
重度プログラムは40秒間続けます。
各トレーニング間のインターバルは最大30秒です。
運動頻度と回数は、
3回/週を14週間行いました。
ST群の運動内容は、
CT群のプログラムの下肢および体幹のプログラムを用いました。
また、
毎回5分間のエアロバイクによるウォーミングアップと
5分間の整理体操目的のストレッチが行われました。
運動強度は、
大腿四頭筋とハムストリングスのトレーニングでは、1RMの50%、
股関節内転および外転筋のトレーニングで1RMの25%、
運動方法は、
5秒の等尺性収縮を15回2set行いました。
また、
体幹トレーニングは、10秒3setとしました。
運動頻度と回数は、CT群と同様3回/週を14週間です。
EP群は、
OAの病体生理学、栄養、姿勢、生活習慣についてプレゼンテーションが行われました。
また、プレゼンテーションの後に、
5分間のストレッチを行いました。
頻度と回数は、
一回のプレゼンテーションは60分とし、
フォロー中の14週間中に2回/週となるように行いました。
評価項目は、
VAS、大腿の脂肪面積、大腿の面積、皮下脂肪、筋線維間脂肪、筋量、膝伸展筋力です。
それでは結果です。
膝の痛みについては、
CT群とST群が開始時よりも痛みが減りました。
また、
大腿面積は、
EP群よりも
CT群とST群の方が大きくなり、
膝伸展筋力も同様に
EP群よりも
CT群とST群の方が強くなりました。
筋線維間脂肪は、
EP群よりも
CT群のみが減りました。
以上のような結果になりました。
いかがでしたか?
筋線維間脂肪は、
筋細胞に近接しているので、
筋収縮させるためのエネルギー源として用いられると言われています。
CTを繰り返すことで、
活動した筋の筋線維間脂肪が減少したと考えられます。
また、
CTは、
カテコールアミンを介した
脂肪分解と脂肪の酸化の増強に関連している可能性があるため
他のトレーニングよりも効果的に脂肪組織の分解が可能と言われています。
以上のように
CTは、
筋線維間の脂肪燃焼に効果的です。
ただ、
STとの比較では差がなかったことから、
STでもある程度の脂肪燃焼が期待できるのではないでしょうか。
「筋力」だけに着目するのではなく、
「脂肪組織」にまで着目するとより科学的なリハビリができるのではないでしょうか。
本日は以上です。
【膝OAのサーキットトレーニングメニュー】
低負荷 –初日から5週まで
☆上肢☆
☆下肢☆
☆体幹☆
☆全身運動☆
中等度の負荷 –6週から10週まで
☆上肢☆
1.立位にてパンチエクササイズ(反対側に向けてパンチ、0.5kgのダンベル使用)
☆下肢☆
6.立位で股関節内転(軽負荷のセラバンド使用)
☆体幹☆
☆全身運動☆
14.立位で肘と反対側の膝を近づける(1.5kgのダンベル使用)
16.立位で両上肢を挙上した状態から外転90度、外転90度の時は足を開く(0.5kgのダンベル使用)。
高負荷 –11週から14週まで
☆上肢☆
1.立位にてパンチエクササイズ(反対側に向けてパンチ、1kgのダンベル使用)
☆下肢☆
5.立位で股関節内転(高負荷のセラバンド使用)
7.フロントランジ(膝の外反を防ぐために、セラバンドで内側へ牽引(図の赤がセラバンド))
☆体幹☆
☆全身運動☆
12.立位で両上肢を挙上した状態から外転90度、外転90度の時は足を開く(1kgのダンベル使用)
14.両手両足を開いた状態からクロスする(1.0kgのダンベル使用)
15.スクワット(0.5kgのダンベル使用、立位ポジションでは手を上にあげる)
以上です。
できるだけ運動に近い画像を載せていますが、
おすすめの画像がございましたらご連絡ください。