人工膝関節全置換術(TKA)は
疼痛の軽減と膝関節機能の回復に効果的と言われています。
しかし、
筋力に関しては、
術前から筋力低下が生じていることもあり、
術後の回復に時間を要します。
膝関節筋力の低下は、
歩行速度、
バランス能力の低下、
階段昇降のしにくさ、
転倒リスクの増加等、
患者さんのADLに影響を及ぼします。
術後の筋力を効果的に改善させるための
方法の一つとして、
神経筋電気刺激療法(NMES)が効果的と言われています。
電気刺激によって誘発された筋収縮は、
自発的収縮よりも大きく、
さらに、
タイプII筋線維収縮を伴う効率的な筋肉トレーニングをもたらします。
また、
NMESによる刺激は、
中枢神経系レベルの運動ニューロンのネットワークの再構築を促すため、
ネットワーク強化ももたらします。
では、
過去の論文において
どの程度効果があると述べられているか見てみましょう。
リハプログラム+NMESを用いた群(NMES群)
と
リハプログラムのみ(リハのみ群)を
比較した報告をみると、
術後6週と術後12週における3分間歩行テストを比較すると、
術後12週においてNMES群が有意に改善したという報告や、
大腿四頭筋、ハムストリングス、6分間歩行、階段昇降テスト、TUG、ROMが3.5週でNMES群のほうが有意に改善したという報告があります。
また、
Knee Society Scoreでは、
術後6,12週においてNMES群の方が有意に膝関節機能が良い状態を示したようです。
Oxford Knee Scoreでは、
術後早期ではNMES群が良い値を示したが、
徐々にその差はなくなったと報告しています。
ROMは、
術後1ヶ月のみNMES群とリハのみ群において有意差を認めましたが、
術後3ヶ月では有意差を認めなかったようです。
また
WOMAC pain,stiffness,total scoreでは、
術後1ヶ月においてNMES群が有意に良い結果を表しました。
以上の報告がされています。
気になるNMESの頻度や強さを
どのように設定したかというと、
NMESの頻度は、
2-3回/週という報告もあれば、
回数は患者にお任せという報告もありました。
ただ、
頻度を決める必要はありませんが、
毎日行うことが重要なようです。
強さは、
患者が許容できる最大の強さがよく用いられていました。
NMESの導入開始の時期は、
術後24-48時間が理想です。
いつまでNMESを継続したらいいかというと、
NMES群とリハのみ群の結果から
術後1〜3ヶ月以降はNMESの効果が無いようなので、
この期間以降は実施しなくてもよいと考えられます。
いかがでしたか、
術後早期におけるNMESの導入はメリットが大きそうです。
術後早期に筋力の回復が必要な方、
術後半年から1年後に筋力の回復が必要な方など、
各症例のゴールに合わせてNMESを導入の検討をしていくことをおすすめします。
本日は以上です。