人工膝関節置換術(TKA)後の早期リハビリテーションの目標の一つとして、
大腿四頭筋の回復と疼痛の改善が挙げられ、
これらは機能的予後と密接に関係しています。
そのため、
大腿四頭筋力と疼痛の改善に対する方法として
理学療法と投薬は効果的であり重要と考えられ、実施されています。
筋力増強と疼痛の改善に対して
筋力増強運動と投薬以外に様々な方法が行われていますが、
その中には、
Neuromuscular Electrical Stimulation (NMES:神経筋電気刺激)、
Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation (TENS:経皮的電気刺激)があります。
TKA後症例に対するNMESの報告は、
四頭筋の強化と術後機能の改善に対するNMESの有効性に疑問を投げかけている研究がいくつかあります。
その理由としては、
局所的な合併症の問題や筋収縮を誘発するほどの強度設定の問題、
介入プロトコルの設定方法に関する統一ガイドラインがないことが挙げられています。
一方、
TENSに関する報告は、
周術期の痛みと鎮痛剤の消費が少ないこと、
術後の膝機能の改善が優れていると報告されている一方、
TENSによる疼痛管理のメリットはないという報告も見られなど
効果があるという報告やないという報告など様々です。
そこで、
今回はNMESとTENSの効果についてまとめたお話です。
NMESとTENSを用いた論文は、
合計496の文献がみつかりました。
最終的に15の論文がシステマティックレビューとして有効でした。
(NMES:8、TENS:7)
7つのNMESに関する論文の計測期間は1ヶ月〜1年でした。
1つのNMESに関する論文の計測期間は入院期間中のみでした。
6つのTENSに関する論文の計測期間は2日〜2週間、
1つのTENSに関する論文の計測期間は6-12週でした。
Intensityは、
NMES・TENS双方ともに同程度であり、
「最大許容範囲」もしくは「強いけど快適」な強さであり、
NMESは100-120mA、TENSは15-40mAでした。
2つのNMESは値を記載していなかった。
刺激の頻度はNMESが40-100Hz、TENSが70-150Hzでした。
電極の大きさはNMESが100-200cm2であり、TENSの記載はありませんでした。
電極の貼付位置は、NMESが大腿四頭筋、TENSは術創部周辺でした。
効果についての報告です。
NMESは、
6つの文献において筋力および身体機能が改善したと報告していました。
1つの研究が大腿四頭筋とハムストリングスの機能が改善し身体機能も改善したと報告していました(52週のフォローアップ)
他には、
6週、12週のフォローにて歩行速度が改善、
また同期間で歩行速度、様々な機能が改善したと報告していました。
伸展ラグの改善(入院中)や最大自動収縮や2分間歩行距離の改善も報告されていました。
TENSは、
5つの研究で鎮痛に効果的であったと述べられていました。
具体的には、
1つの研究で術後6週における動作時痛を改善したと報告されていました。
他の研究では、
Visual Analog Scale(VAS)の改善とともに、
鎮痛薬の消費が3日-2週の期間減ったと述べていた
他には、
VASの改善、
鎮痛薬の使用の減少が少ない傾向
術後3日におけるNRSの改善
電気刺激の強度が閾値を下回ると38%、適切な値だと50%の疼痛改善
と述べられていました。
上記のようなメリットが述べられていた一方で、
鎮痛作用と鎮痛薬の消費減に対して効果的ではないという報告が2例ありました。
効果的ではなかった理由としては、
TENSの強度設定を患者任せにしたことと述べられていました。
NMESとTENSを用いた際の合併症は、
NMESでは
2つの研究で3例の疼痛の訴えがありました。
また、2例において1度の熱傷が報告されていました。
TENSでは5例の水泡形成が報告されていました。
NMESとTENSをまとめると
以上のようになりました。
以上をまとめ、
NMES・TENSの推奨される使用方法は、
NMES、
・手術後1〜2日以内に開始し、週5日実施
・30〜100Hzの「高周波」
・100〜120mAの「最大許容範囲」もしくは「強いけど快適」な強さ
・4〜6週間の間は、1日2回
・強度と頻度が低い、週に2〜3回では効果がない
TENS、
・15〜40 mA
・70〜150 Hz
以上が推奨される方法と考えられます。
使用時間や貼付場所も気になるところですが、
確定的な内容が記載されていませんでしたので、
この記事には載せていません。
大腿四頭筋の改善や疼痛の抑制に対して、
NMESやTENSの使用も検討してみてはいかがでしょうか。
本日は以上です。