Body mass index(BMI)が大きいことは、関節への負荷やストレスが増加すると言われています。
特に人工膝関節置換術(TKA)後における肥満の影響は様々であり、
手術中の出血量が多いこと、
手術時間が伸びること、
感染リスクが高くなること、
静脈血栓ができやすいこと、
インプラントのアライメントが悪くなりやすいこと(→再置換の可能性が高くなる)、
可動域が悪くなる等
多くの不利益があります。
そこでBMIは身体機能についても影響を及ぼすのかどうかを調べるため、
今回は、BMIと歩行速度および可動域との関係についての報告です。
79人を対象とし、
非肥満群(BMI<30kg/m2)、
肥満群(BMI≧30kgm2)の2群に分け、
TKA前とTKA後1年に次の項目を評価しました。
評価項目は、
歩行速度、
歩行中のROM、
術前後差、
Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)とし、
結果を2群間で比較しました。
結果です。
術前の歩行速度と可動域は有意に肥満群が低い結果になりました。
歩行速度:肥満群:0.99±0.27 m/s 、非肥満群:1.11 ±0.18 m/s
ROM: 肥満群:41.33±9.6、非肥満群:46.05±8.39。
歩行速度の改善またはROMの改善とBMIに関係性は認められませんでした。
術前に肥満の患者はより疼痛が強い傾向がありました(WOMAC pain: 肥満群:36.1 ± 14.0、非肥満群:50.4 ± 16.9)。
また、術前後の疼痛の改善は有意に肥満群の方が高い結果となりました。
(※肥満群は術前に疼痛強いから、術前後差が大きくなるのは明白ですね。。。)
以上のような結果となりました。
結論として、統計的には歩行速度やROMはBMIに関係なく全ての患者が改善することがわかりました。
ただ、
上にも書きましたがBMIが大きいと様々なリスクが生じることは、
患者教育の意味でも理解しておく必要があります。
また、今回の報告は術後1年後ですが、
術後2年、10年後等ではBMIが大きいと機能面になんらかの影響が生じる可能性はゼロではありません。
BMIと術後1年以上の結果については情報が入り次第ブログにアップしていきたいと思います。
本日は以上です。