脛骨の解剖 〜後方傾斜のメリットとデメリット〜

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臨床で膝の疾患のリハビリを行う際に、膝のkinematicsや関節可動域(ROM)・筋力はもちろん重要ですが、大腿骨や脛骨・膝蓋骨の形態は、kinematicsやROM・筋力に影響するため、膝疾患のリハビリにおいてとても重要な要素の一つです。

 

 

そこで、今回は、脛骨の形態、特に脛骨近位関節面の後方傾斜角度についてのお話です。

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この脛骨近位関節面の後方傾斜角度は、どのくらいの角度となのでしょうか。

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また、内外側の関節面で角度が異なるのでしょうか。

 

まず、脛骨近位関節面の後方傾斜角度については、

いくつか海外において報告があり、

内側関節面の後方傾斜は、約7~10度と言われています。

また、外側関節面の後方傾斜は、内側関節面の後方傾斜より約3度少ないそうです。

 

 

【脛骨関節面の後方傾斜角度の影響】

脛骨近位関節面の後方傾斜角度がどのようなことに影響するのでしょうか。

 

 

それは、

1)脛骨の前方へのtrasnlation

2)ROM

に影響を及ぼします。

 

1)脛骨の前方translationへの影響

 

なぜ、脛骨の前方translationに及ぼすかというと、膝関節の荷重下では、脛骨大腿関節へ圧縮応力が加わります。すると、脛骨の後方傾斜によって、圧縮応力が前方への剪断力を生み、結果として、大腿骨に比べて、脛骨が前方へtranslationしやすくなります。特に、前十字靭帯(ACL)損傷では、脛骨の前方translationの値が大きくなります。

そのため、男性よりも女性の方が脛骨後方傾斜が大きいため、荷重時における脛骨の前方剪断力を生じく、ACL損傷を生じやすいとも言われています。

 

 

 

2)膝のROMへの影響

 

膝の屈曲時のkinematicsはrollbackを生じ、深屈曲時には脛骨に対して大腿骨がかなり後方へと位置します。脛骨後方傾斜が強いということは、脛骨の前方translationが生じ脛骨に対して大腿骨が後方に位置するため、脛骨後方傾斜が大腿骨のroll backが生じた時と同じポジションとなることを助けるため、ROMが良いといわれています。

ただ、これはACL損傷や人工関節(TKA)後の膝に限ります。健常な膝では、ACLが機能しているため、脛骨傾斜によって脛骨は前方translationしないはずです。

また、TKA後のROMへの影響は、賛否あり、脛骨後方傾斜が増加してもROMに影響しないという報告もあります。

 

 

以上の脛骨後方傾斜の影響を考えると、ACL再建術後の治療プログラムにおいては、後方傾斜角度が大きく、再断裂の可能性が高い症例には、脛骨の前方剪断力を相殺するハムストリングスを重点的に行うなど検討が必要でしょう。

後十字靭帯温存型TKA(CR)の場合も術後の脛骨後方傾斜角度から、関節可動域獲得の治療戦略を検討することや、脛骨後方傾斜角度が大きい場合には、脛骨前方translationを相殺するハムストリングの重点的なトレーニングを取り入れていく必要があるでしょう。

 

 

 

今回は、脛骨近位関節面の後方傾斜についての話でした。ACL損傷後やROM制限のある症例に対して、脛骨近位の関節面に注目してアプローチするのも一つかもしれません。

合わせて読んでおきたい記事:  ホームエクサイズと外来リハビリ後の身体機能・マニュピレーション・コストについて
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