- 2019-10-7
- 日常生活
以前、
人工膝関節置換術後の余暇活動への満足度について報告しましたが、
余暇活動を含めたTKA後の膝についての満足度はどの程度でしょうか。
それは、
人工膝関節全置換術(TKA)は、
手術手技やインプラントのデザインが改良されてきたにも関わらず、
患者満足度は、
82%〜89%と言われています。
この結果から考えられることは、
症例のかなりの割合において、
疼痛の改善や膝関節機能の回復が不十分だと考えられます。
今回は、
患者満足度において、
不満足の原因を調査した文献の報告です。
1703名を対象としました 。
TKA後1年に患者満足度を評価しました。
満足度の評価項目は、
- 全体としての満足度
- 歩行、階段、立ち上がりにおける満足度
- 階段昇降、車の乗り降り、バスの乗り降り、ベッドからの立ち上がり、ベッドへの移乗における満足度
以上の質問に対して、5段階にて回答を得ました。
5段階の内訳は、
満足、まぁまぁ満足、普通、ちょっと不満、不満
です。
それでは結果です。
全体としての満足度は、
満足、まぁまぁ満足の方は全体の81%でした。
一方、
不満、ちょっと不満、普通の方は全体の19%でした。
機種や膝蓋骨置換による満足度の偏りはありませんでした。
疼痛に関しては
階段昇降における疼痛に対する満足度は、
満足・まぁまぁ満足の方は72%でした。
歩行時の疼痛に対しての満足感は、
満足・まぁまぁ満足の方は85%でした。
寝起きの際の疼痛に対する満足度は、
満足・まぁまぁ満足の方は84%でした。
術後の膝関節機能に対する満足度は、
バスの乗り降りが70%
階段の乗り降りが73%、
ベッドへの移乗が82%
寝起きが84%
簡単な家事が83%
の方が満足・まぁまぁ満足でした。
満足・まぁまぁ満足の方を満足群、
普通。まぁまぁ不満・不満の方を不満足群の2群にわけて比較すると、
高齢、独居、安静時の疼痛が強い、術後に合併症を発症した、術後1年のWOMACスコアが低い症例は有意に不満足群に多い結果となりました。
逆に、屈曲90度以下の症例は満足群に多い結果となりました。
また、
TKA後の膝の状態が
患者自身の想像(期待)と異なると感じている症例も有意に不満足群に多い結果となりました。
TKA後の満足度の予測因子は、
年齢、
術前の安静時のWOMAC疼痛スコア、
術前の機能スコア、
入院を必要とする合併症、
術後1年のWOMACスコア、
患者の期待と手術結果との相違
以上が予測因子となりました。
さらに、
この中で強い相関を認めたのは、
TKA後の膝が自身の想像(期待)と異なったこと(10.7)
TKA後1年におけるのWOMACスコアが低い(2.5)
TKA前のWOMACの安静時の疼痛スコアが低い(2.4)
入院が必要な合併症を生じた(1.9)
でした(( )はオッズ比)。
いかがでしたか。
今回とはまた別の論文では、
TKA後の膝関節に対して、
76%が無痛、
40%は機能制限がないと思っていたという報告もあります。
術前からTKA後の膝関節をいかに想像させるか、
TKAを受けられる方へきちんとした情報提供を行うことは満足度へ影響を与えることになります。
そのため、
術前リハビリの際に、
文献で報告されている術後の疼痛や膝関節機能の推移を患者さんに提示することも一つではないでしょうか。
もちろん、自施設の傾向をまとめて患者さんに提示することも良いと思います。
また、
低い術後一年のWOMACスコアや
術前の安静時のWOMAC疼痛スコアに対しては、
術前・術後リハビリにて対応可能であれば、
問題となっている項目に対して、
積極的にアプローチしていく必要があります。
本日は以上です。