人工膝関節全置換術(TKA)後6週が経過すると、
手術による影響が減少し、
膝の機能・QOLの改善、疼痛が減少する重要な期間と言われています。
しかし、
術後6週が経過しても持続的な疼痛を訴える症例や
膝関節の機能が改善しない症例が少なからず存在します。
このような疼痛や機能不全は、
TKA後の患者満足度の低下の一要因と言われています
術後6週の疼痛や機能不全の状態がいつまで続くのか、
その要因を解明することは、
TKA後の長期成績の改善につながり、
患者満足度の向上に貢献できます。
今回は、
TKA後6週と6ヶ月における
- 膝関節屈曲-伸展時の疼痛と膝関節機能の変化
- 膝関節屈曲-伸展時の疼痛と機能の変化に関する要因
についてのお話です。
対象は、
TKAを行なった223例です。
TKA後6週における疼痛と膝関節機能は、
【疼痛】
(疼痛を0-20の21段階にて評価し、0-7:疼痛なし-少し痛い、8-20:まぁまぁ痛い-めちゃくちゃ痛い)
・疼痛なし-少し痛い:69%
・まぁまぁ-めちゃくちゃ痛い:31%
【膝関節機能】
(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS),のFunction in Daily Living(KOOS ADL )を用い、75点以上:調子が良い、75点未満:調子が悪い)
・調子が良い:51%
・調子が悪い:49%
でした。
TKA後6ヶ月における疼痛と膝関節機能は、
【疼痛】
・疼痛なし-少し痛い:84%
・まぁまぁ-めちゃくちゃ痛い:16%
【膝関節機能】
・調子が良い:77%
・調子が悪い:23%
でした。
- 術後6週→術後6ヶ月における疼痛と膝関節機能の変化
【疼痛】
全体の75%は疼痛に変化がなく、
術後6週から6ヶ月までそのままの状態で推移しました。
推移のなかった症例の割合は、
・疼痛なし-ちょっと痛い:64%
・まぁまぁ痛い-めちゃくちゃ痛い:11%
でした。
また、
術後6週においてまぁまぁ-めちゃくちゃ痛い症例の残りは疼痛が改善し、
一方、
疼痛なし-ちょっと痛い症例の残りは疼痛が悪化しました。
【膝関節機能】
全体の65%は膝関節機能が変化せず、術後6週から6ヶ月までそのままの状態で推移しました
推移のなかった症例の割合は
・調子いい:47%
・調子悪い:18%
でした。
また、
術後6週において調子が悪かった症例の残りは
術後6ヶ月にはKOOS ADLが改善し、
一方、
術後6週において調子がよかった症例の残りは
術後6ヶ月においてKOOS ADLが低下しました。
- 術後6ヶ月までの疼痛と機能の変化に関する要因
【疼痛】
疼痛に関する要因(( )内は標準偏回帰係数)は、
ROM時の疼痛(0.64)、不安(-0.15)、Pain Catastrophizing Scale(-0.18)
でした。
【膝関節機能】
膝の機能不全に関する要因は、
6週時の機能不全(-0.5)、女性(0.19)、うつ(-0.2)、Pain Catastrophizing Scale(-0.16)
以上のような結果となりました。
いかがでしたか。
疼痛と膝関節機能において
術後6ヶ月では多くの症例が
術後6週と同様な疼痛と膝関節機能の状態ということがわかりました。
さらに、
約15%の症例が強い疼痛が残存すること、
膝関節機能においては、
20%以上が機能が低下した状態で術後6ヶ月を迎えるという結果となりました。
ただ、
今回の研究は疼痛も膝関節痛も2択での評価(一応4択でしたが)のため、
術後の推移がこのような結果になったとも考えられます。
4択のままであれば、異なる結果となったのではないでしょうか。
また、
術後疼痛の訴えが強い症例を減少させていくために
術前・術後に疼痛・疼痛に対する考え方の教育を行うことや
術後6週にまでに積極的にアイシング等の物理療法を用いて
疼痛の軽減を行なっていく必要がありそうです。
術後6ヶ月において機能不全の症例が約20%以上存在したということは、
運動器疾患の算定期限を超えても膝関節機能が改善いない症例が存在するということです。
術後6週の膝機能が術後6ヶ月の膝機能へ影響を及ぼすことから、
積極的に術後6週までに機能改善を行なっていく必要があります。
今回は以上です。