TKA後の筋力増強運動を行う際に、
運動速度を意識したことはありますか?
求心性の高速での筋収縮能力は、
動的バランス評価と相関しており、
転倒の予測因子の一つと言われています。
「高速」の筋収縮が
どのような動きかというと、
例えば、
膝関節屈曲位から伸展位を動かす場合、
1秒間に1回動かすことを「高速」の筋収縮(HV)、
一方、
低速での筋収縮(SV)は2-4秒に1回の速さで筋収縮と言われています。
また、
その際の運動負荷は%MVCの20-70%と言われています。
このHVエクササイズは、
加齢による2型運動線維(速筋)の萎縮にも効果があると言われ、
また、
転倒を予防する低負荷動作における動的バランスにも効果的と言われています。
今回は、HVとSVトレーニング後の
TKA症例の歩行やバランス、筋張力・筋力を比較した報告です。
対象は、
HV群11名、SV群9名でした。
術後リハビリは、
ROMの改善と炎症・腫脹の軽減、
歩行自立を目標に実施し退院時には
ホームプログラムの指導を行いました。
HV または SVエクササイズは、
2回/週、8週間実施しました。
HVエクササイズは、
大腿四頭筋求心性収縮を1秒、遠心性収縮は3秒間にて実施し、
SVエクササイズは求心性、遠心性ともに3秒間にて行いました。
各プログラムの回数は、
8回 × 2もしくは3set実施し、
10回3set可能となれば負荷を増加しました。
評価は、
疼痛、バランステスト、10m歩行速度、6分間歩行テスト、階段昇降テスト、大腿四頭筋力,KOS-ADLテストを実施しました。
結果です。
6分間歩行テストにおける歩行距離がHV群が有意に大きな値となりました。(HV群:97.1m、SV群:54.4m)
一方、
10m歩行速度は有意差を認めませんでした。
また、
大腿四頭筋の最大等尺性収縮力(PIF)は、
HV群の方が有意に改善しました。
その他の評価に関しては、
有意差を認めませんでした。
運動皮質から運動単位へ伝達する能力の低下は、
大腿四頭筋の萎縮や高齢者の歩行障害に関連しています。
また、
運動初期に運動単位を動員する能力は、
健常人と比較すると
TKA症例では、
その速度が低下すると言われています。
運動初期における、
神経運動障害の改善については、
まだ解明されていませんが、
HVエクササイズによる意図的な自発的活性化の利用は、
運動皮質からの神経の活性化を促進するトレーニング刺激として役立つ可能性があります。
そのため、
6分間歩行テストでは、
運動単位への神経駆動が促進され、
運動単位の動員と発火率が改善されたため、
動的安定性が向上し、
歩行サイクルの負荷応答の制御に費やされる時間が短縮されたことによると考えられます
筋力増強運動と聞いて頭に浮かぶのは、
重錘をつけて一定の速度で10回3setですが、
今回の報告のように、
速度を変えて速筋・遅筋それぞれに対して詳細なアプローチを実施することもひとつだと思います。
本日は以上です。