人工膝関節全置換術(TKA)後の下肢筋力の改善と膝関節のROMの獲得は、
TKA後症例の最優先の課題です。
TKA後の機能回復は、
術後3-6ヶ月において、
85-95%が関節痛を軽減でき、
70-80%がADLが改善すると言われています。
また、
QOLは3ヶ月で改善するという報告が多くみられます。
QOLの改善について
対象者を詳細にわけると、
女性や若い症例、
職業復帰の必要性がない方、
合併症を有していない症例はQOLの改善が大きいと報告され、
男性は1年でQOLが改善すると言われています。
では、
術後早期の身体機能やADLはどの程度回復するのでしょうか。
今回は、
術後2・6週における
膝機能、歩行能力およびQOLの改善についてのお話です。
61症例を対象に、
膝関節機能としてOxford Knee Score(OKS)、
膝関節屈曲角度、
Timed up and go(TUG)、
EQ-5D utility index(EQ-5D)
を
術前・術後2週と6週に測定しました。
OKS全体のスコアは、
術前と術後2週で比較すると、
術後2週のスコアが有意に高く、
術前と術後6週を比較すると
術後6週のスコアが有意に低く、
OKSの関節機能のスコアは、
術後2週では、
術前よりスコアが高い結果となりました、
一方で、
術後6週では術前と有意差を認めませんでした。
OKSの疼痛スコアは、
術後2週では、
術前と有意差を認めませんでした。
術後6週では、
術前よりスコアが低下していました。
術後の関節可動域は、
術後2週では、術前より4.24度少なく、
術後6週では、術前より5.18度大きい結果となりました。
歩行能力は、
術前と術後2週・術後6週において有意差を認めませんでした。
EQ-5Dは、
術後2週では、
術前と有意差を認めませんでした。
術後6週では、
術前より有意に大きな値となりました。
今回の結果からみると
ひとまず、
術前の膝関節の状態まで戻るには、
術後2週から6週の間と考えられます。
特にOKSの膝関節機能とROMが
術後2週に術前の状態に戻っていないことを考えると、
早期退院し、
自宅生活において膝関節を曲げることが必要な動作において
介助や環境設定が必要と考えられます。
術後2週以内に退院するのであれば、
十分な生活指導と環境設定が必要と考えられます。
一方、
歩行能力(TUGのみの結果ですが)は、
術後2週にて術前と同等のレベルまで改善してるので、
転倒へのリスクは大きくないと考えれもいいのかもしれません。
(バランス能力を調査していないので断言はできませんが)
過去の報告では、
階段の上り下りは3ヶ月と報告されています。
段差の上がり下り等の膝関節に負担のかかる動作は、
さらに日数を要するため、
急性期の病院を退院するときには
十分な患者指導が必要と考えられます。
TKA後は膝関節の環境が大きく変わります。
歩行や階段昇降などに必要な膝関節の動きを
再獲得する必要があります。
過去の報告を参考に、
環境の変わった膝が
いつ、どの動作を獲得できるのか
知っておくことで
ゴール設定がさらに明確になると思います。
本日は以上です。