TKA後1年においてBMIは歩行速度と歩行中の膝ROMへ影響を及ぼす?

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以前、

人工膝関節置換術の再置換と肥満

人工膝関節置換術後患者のBMIが歩行速度と関節可動域に及ぼす影響は?

肥満患者の人工膝関節置換術に対するリハビリの効果

の記事にて取り上げたように、

人工膝関節全置換術(TKA)とBMIは切っても切れない関係にあります。

 

このブログを読まれている方はご存知と思いますが、

TKA適応となる変形性膝関節症(OA)は、

肥満や体重の超過がOAの危険因子であり、

OAの進行は加齢と肥満の増加と共に上昇すると言われています。

 

肥満は、

運動時の関節へのストレス・負荷を増加させると共に、

TKAの手術においては、

出血量の増加、

手術時間の延長、

感染リスクの増大、

静脈血栓の増加、

インプラントのアライメント不良等が生じ、

再置換のリスクが増加すると言われています。

 

過去の報告では、

肥満症例は肥満ではない症例と比較して差がないという報告もあるが、

機能的スコアに差が生じるという報告もあります。

ただ、

これは機能的スコアだけであり、

活動中のROMについては言及されていません。

今回の話は、

肥満と歩行中の膝関節ROM・歩行速度の関係を調査した話です。

 

 

 

79例のTKA症例を

BMI35未満群(未満群)45例、

BMI35以上群(以上群)34例の2群にわけました。

またコントロール群としてTKA症例と年齢等が同等な32例を正常群としました。

 

以上の3群を3次元動作解析装置を用いて術前と術後1年の歩行動作を解析し、歩行速度と歩行中の膝関節の可動域を測定しました。

 

 

 

結果です。

 

 

TKA後1年のROMを

BMI30未満群・BMI30以上群と正常群群で比較すると、

BMI30未満は49.40 ± 7.22度、

BMI30以上は44.97 ± 6.62度、

正常群は55度以上、

であり、

BMI30未満群、BMI30以上群は有意に低下していました。

ただ、BMI30未満群とBMI30以上群を比較した結果は、

掲載されていませんでした。

(統計的有意差がなかったから掲載されなかった。。。?)

 

TKA後1年の歩行速度を、

BMI30未満群・BMI30以上群と正常群群で比較すると、

BMI30未満は1.24 ± 0.16 m/s

BMI30以上は1.08 ± 0.28 m/s

健常群は1.42 ± 0.22 m/s、

であり、BMI30未満群、BMI30以上群は有意に低下していました。

ROMと同じように、

BMI30未満群とBMI30以上群を比較した結果は、

掲載されていませんでした。

(こちらも統計的有意差がなかったから掲載されなかった。。。?)

 

また、

歩行速度が1.3m/sに達した割合は、

BMI30未満群は42.2%、BMI30以上群は20.0%であり、

有意にBMI30未満群が多い結果となりました。

 

 

 

いかがでしたか。。。?

 

 

歩行中の膝関節屈曲のROMが少ないことについて、

この著者は、

「正常群と比較して膝関節屈曲が少ないのは単に歩行速度が遅いから」

と過去の論文を引用して考察していました。

疼痛のスコアのデータがあるので歩行時の膝関節屈曲との相関の結果から

再度歩行時の膝関節屈曲の減少を考察するとより面白い結果になるではと思いました。

 

TKA後1年を経過しても

歩行速度や歩行中のROMは正常群におよばない結果となったことは、

TKA後のリハのゴールは「正常膝」ではなく「TKA後の膝」とするべきなのか。。。

それとも、「正常膝」を目指すべくTKA後のリハビリを行なっていくのか。。。

今後検討が必要だと思います。

 

 

BMI30未満群とBMI30以上群比較の結果の記載がないので断定的なことは言えませんが、

おそらく、

TKA後の歩行速度やROMに関して、

肥満は大きな影響を及ぼさないと考えられます。

ただ、

肥満は感染等のリスクが高まりますので、

合併症による二次的なリハビリの進捗が停滞することや目標の変更が生じることを頭の隅に置いておく必要があると考えられます。

 

 

本日は以上です。

合わせて読んでおきたい記事:  人工膝関節置換術後の運動機能評価(5STS)
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